よくあるキッチンの問題点
物(家電品・ゴミ箱・買い置き・雑貨等)があふれていたり、コンセントなどの設備品が不足している。
キッチンとダイニング・サービスヤード・水廻りとのつながり方については、ニーズを把握しきれず、的確なプラン提案ができていない。
キッチンで必要な空間を考える
キッチンの基本的な考え方
■ キッチンで行う作業に必要な奥行を確保しましょう
ここでの「奥行」はキッチンセットと背面壁<家具>との距離をいいます
最低寸法:800㎜
標準寸法:1000㎜
・複数で作業する場合は1000以上を確保するのが望ましい
ただし奥行がありすぎても、動線が長くなるだけで使い勝手が悪くなります。とはいえ最大1300㎜までで十分です。
■ 冷蔵庫に入れない食品類・台所用品の収納のために、パントリーを設けましょう
■ キッチンの広さを考えるとき、作業動線・通路の確保しましょう
■ キッチン内での基本的な作業動線は、シンク・コンロ・冷蔵庫を結ぶ三角形(キッチントライアングル)で考えましょう
■ キッチン奥行に対する、レイアウトの可否を考える
キッチン奥行[W] | 2000㎜程度 | 2275㎜程度 | 2250㎜~2550㎜程度 | 2500㎜~
冷蔵庫をキッチンセットの同一面にした場合 | 壁付キッチン〇 対面キッチン- | 壁付キッチン〇 対面キッチン- | 壁付キッチン〇 対面キッチン- |
冷蔵庫をキッチンセットの 背面にした場合 | 壁付キッチン× 対面キッチン× | 壁付キッチン〇 対面キッチン〇 | 壁付キッチン〇 対面キッチン〇 |
キッチンの奥行2250㎜~2275㎜程度
標準となる奥行サイズといえます。
1人での作業は効率的にできますが、レイアウトによっては2人での作業がしづらい場合があるので配慮が必要です。
➡冷蔵庫が同一面・壁付キッチン
●特徴
・作業する人の後ろを、別の人が通ることができる。
・食器棚や家事カウンターへも、一歩踏み出すだけで楽に手が届く。
・キッチンセットと食器棚の間に、圧迫感が少ない。
➡冷蔵庫が背面・壁付キッチン
●特徴
・1人作業では問題ないが、複数作業だと冷蔵庫前がやや手狭となる。
〇 広くなるし見栄えもよい。 | 冷蔵庫を後ろに下げて食器棚と面を合わせれば、冷蔵庫が出っ張っていて複数作業だと動きづらいうえ、 背面壁が2750㎜程度では収納スペースが不足している。 |
➡冷蔵庫が背面・対面キッチン
●特徴
・一般的な対面キッチンのレイアウトである。
・冷蔵庫が出っ張る分、通路がやや手狭になる。
キッチンの奥行2250㎜~2275㎜程度
少し広めの奥行サイズ。
2人での作業も余裕をもって行えますが、作業動線がやや長くなるので使いづらい場合もあります。間口がこれ以上広いと、使い勝手が悪くなりますので注意が必要です。
➡冷蔵庫が同一面・壁付キッチン
●特徴
・2人での作業が余裕をもって行える。
・キッチンセット~食器棚・家事カウンターがやや遠く感じる。
➡冷蔵庫が背面・壁付キッチン
●特徴
・冷蔵庫が出っ張るが、間口に余裕があるため2 人での作業に問題はない。
➡冷蔵庫が背面・対面キッチン
●特徴
・冷蔵庫が出っ張るが、スペースに余裕があるため容易にすれ違うことができる。
➡キッチンの奥行2000㎜~2050㎜程度
通路の巾が800mmとミニマムになり、レイアウトに注意を要する。
二世代住宅のセカンドキッチンや、狭小プランなどにおいてはこのケースも考えられるが、極力避けるようにする。
➡冷蔵庫が同一面・壁付キッチン
●特徴
・振り返るだけの動作で、楽に食器棚や家事カウンターに手が届く。
・やや手狭で、圧迫感もある。
・複数作業には狭い。
食器棚や家事カウンターの奥行は、作業通路を少しでも広くとるため450 以下としましょう。特に市販の家電棚(レンジ台)は奥行が大きいので注意が必要です。
➡冷蔵庫が背面・壁付キッチン
間口2000 で冷蔵庫を背面に置くと、必要な奥行が確保できないため原則として禁止とする。
冷蔵庫を後ろへ下げるなどして奥行を確保する。
➡冷蔵庫が背面・対面キッチン
・対面キッチンは極力避けるべきだが、強い要望がある場合は、上のような冷蔵庫の奥行を意識したプランにするなどの対応を要する。
キッチン自体を考える
キッチンの寸法
キッチンの高さ
キッチンの高さは、H=身長/2+5cmという計算式を目安に設定しましょう
下の図はあくまで目安でなので、現在使用されているキッチンの使い勝手を確認し、適正な高さを判断しましょう。
※身長が150~160cmの場合、キッチンセットの高さを80cmにするか85cmにするかを決める際は、スリッパやマットを使うケースも想定して実物を使って確認することが望ましいです。
キッチンセットの長さ
① キッチンの長さはシンク芯~コンロ芯を、1200㎜~1800㎜を基本として検討しましょう。
また、スペースに余裕があれば、物を置くスペースとしてカウンターを広くとりましょう。
② カウンター全体の長さは、ひとりでの作業を想定した場合、2400㎜以上とするのが望ましいです。
食器棚(カップボード)を考える
食器棚の収納量
食器棚を考える場合は、今ご使用の食器棚の収納量以上を確保する必要があります。
また、新居へ持ち込む食器棚等のサイズを確認して、予め置き場を決めておく。
食器棚カウンターの長さ
食器棚カウンターに家電品を置く場合は、幅1200㎜以上が有効
食器棚カウンターは単に家電品などを置くスペースだけでなく、ご飯を盛り付けるときに茶碗を置いたりするスペースも確保しておく必要があります。
食器棚カウンターの高さ
食器棚カウンターを設ける場合、その上の空間は500㎜以上を確保し、吊戸棚の下端を床から1350㎜より高いところに設定するのが望ましいです。
この寸法をとることで炊飯器のふたを開けることができ、ご飯の盛り付けもしやすくなります。
また、吊り戸がある場合は炊飯器の湯気により、食器棚に汚れがつくことがあるので、充分理解しておく必要があります。
冷蔵庫置き場を考える
冷蔵庫の配置
現在、販売されている冷蔵庫は、奥行650㎜~700㎜が一般的です。従って、キッチン内のアイテムとしては最も奥行があり、食器棚と並ぶと面がそろいません。
スペースの効率を考えると、キッチン本体に並べるほうがよいのですが、冷蔵庫の分、配膳動線が長くなることがあります。
× | 〇 |
置くが、ダイニングからの動線が長くなる位置に置くと使いにくい。 | 一般的に冷蔵庫はキッチンセット内に冷蔵庫の使い方を考慮すると、ダイニングから使いやすい位置が望ましい。 |
コンセントの位置は安全性を考慮して、ほこりがたまりにくく、水がかかりにくい高い位置とすると良いです。
ただし、冷蔵庫横に設置できる場合は、掃除機用としても使えるように低い位置(FL+200)でも有効。
冷蔵庫の開き勝手
冷蔵庫の開き勝手は、配置を決める上で非常に重要なので必ず確認する必要があります。
開き側に壁があると、使いづらくなります。手持ちの冷蔵庫を使う場合、事前に確認しましょう。
冷蔵庫とインターホンの関係
あらかじめ搬入路をきちんと確保しておく必要があります。幅3,500㎜程度の場合、冷蔵庫など家具の搬入路にインターホン等がある場合に、搬入時に干渉しないよう考慮する必要があります。
壁にインターホン等があると、扉をいっぱいまで開けることができませんので注意が必要です。
パントリー
ほとんどの家庭で置場に困っている、あまり使われない調理器具、食器・泥野菜・不燃ゴミなどの収納に、パントリーが非常に便利で有効です。
パントリーのスペース
キッチンもしくはダイニングに近接した場所がよく、スペース的に設置できない場合は、食器棚や家事カウンターで代用する場合もありますが、奥行が浅く大型器具が収納できないなど充分とはいえませんので注意が必要です。
勝手口を考える
勝手口の土間スペース
ゴミ出しや飲料ケースの搬出入等で活用したい場合に便利なので、勝手口を設けることが望ましいですがが、その場合は土間を設けたい。ただし、日常の作業動線から外れる位置に設けるよう注意が必要。
例えば、靴をぬぐスペースが外だと不便になりがちです。下駄箱として収納を設けても、床に泥が落ちたりして使いにくいです。
その為、勝手口に土間を設け、靴をぬぐスペースを確保が必要です。収納を土間横に設けることができるので、泥が床に落ちたりしません。
勝手口ドアの開き勝手
勝手口のドアは風(特に北西の風)に配慮して開き勝手を考えましょう。
冬場の強い北西の風が吹き込んだり、ドアが急に開いたりして危険です。外壁に傷がつく可能性もあるので注意です。
北西の風が強く吹いても、ドアに負担がかかりにくいようにしましょう。
ゴミ置き用のスペースを考える
ゴミの分別を前提に、ゴミ置きスペースは広くとる必要があります。容器ひとつを250㎜×300㎜と考え、お住まいの地域が4種類の分別であれば、1000㎜×300㎜の広さを確保しましょう。
キッチンに置ききれない場合は、収納庫(パントリー)または屋外で計画するのも有効です。
キッチン回りの電気設備を考える
コンセント
キッチンのコンセントは、7~8 口を最低数として考える!
位置については、何に使うかを配慮しながら、使いやすい位置に設置しましょう。
※電子レンジなどを使わないときコンセントを抜いておく方の場合、コンセントは使いやすい位置に設置するよう配慮が必要です。
また、スイッチを連動させるのもGOOD!
スイッチ
キッチンのスイッチは、出入口付近のわかりやすい位置に設置!
動線が2方向ある場合は、3路スイッチを設けましょう。
キッチン照明
キッチン照明は、全体照明、シンク照明(流し元灯)、フード照明の3カ所が基本
シンク前に大きな窓を設けた場合、照明が高い位置になり、手元が暗くなることがあります。
そのため、天井に蛍光灯やダウンライトを設けるか、または、窓の上にブラケットを設けるなど、充分な明るさを確保できるように配慮しましょう。
キッチンの照明は、食材の色合いなどが認識しやすい三波長型の蛍光灯が望ましいです。
キッチンを設計する時の注意点は?
キッチンは奥様を中心に毎日、長時間使われる場所であることが多いです。また使い勝手の良し悪しは、好みや習慣などにより人それぞれ異なりますので、事前によく使い方を把握して計画する必要があります。
なお、使い方の把握をする際は、現状お使いのキッチンの良くない点について考えるのが良いです。仮に、現在お使いのキッチンに満足されているとしても、より使い勝手のよいキッチンをご存じないだけかも知れませんので、キッチンの仕様に詳しい設計者にヒアリングしてみましょう。
キッチン設計のまとめ
適切な収納や、設備品に関する充分な配慮が必要!
そもそも自分自身のキッチンに関する問題点はどんなものか、把握しきれていないないかもしれません。
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